2016年03月16日 18時32分

完全なもの⑥(完)

テーマ:完全なもの

幸せ。寄り添い愛を与え続けていたこと

そんなのは遠い過去―

今は私の記憶の中だけにあるもの

誰かに愛を与え続ける幸せ"愛すこと"を失くしてしまうことは悲しくて痛い。

誰もいないゆえに不幸せであるなら、私の悲しみは永遠に消えることはない―

夢。不完全であるはずの絆

離れても繋がりは強く感じていた―

ひとりになりたくてなったわけじゃないのに…

不完全であるがゆえに引きあい惹かれあう力は、不完全なものたちであるがゆえに繋がりは弱くて脆かった―

ゆえに、"完全に不完全"であると同時に夢の力が膨らんで弾けてしまった。

…きっかけは夢の力が失われたときだった。

私は"完全なもの"になっていた。

私はもう"ひと"ではなかった。

でもこんなのは私が望んだことじゃなかった…

私に残されたのは幸せな記憶だけで、私に出来ることは記憶の中の世界たちを愛すことだけだった。

記憶の中の世界たちは愛を喜んでくれた。

- 永遠の悲しみは遠い過去へ、繋がりは幸せな記憶の中へ -

私の中で私自身と繋がることは、その"孤独の夢"を強くしていた。

"完全に不完全なもの"は孤独と引き換えに、永遠の夢と無限の愛を手に入れていた―

―世界は最初は完全だったのかもしれなかった。

私が生まれたことで不完全になったのかもしれなかった。

それなら今の私は、私が生まれる前の世界と同じ。私が憧れていた世界なのかもしれない…

もしかしたら私は私が望んだ結果"今の私"になったのかもしれなかった。

世界が孤独で悲しかったから、私は生まれたのかもしれない。

完全な私はそう思って、"世界"を作った。

その一欠片が幸せであるように、祈るように夢幻の愛を与え続けた―

………。 

―完全な世界は作られていた―

終わりのない矛盾を繰り返して…

いつか世界が言ってくれた"ひとつに溶けあう約束"を夢みて

(おわり)


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